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開発&コンサルティング

1-2 商品流通を担ういろいろな企業

商品流通を担う企業には、商品を製造(生産)する企業と、商品を流通させる企業とがあります。商品を流通させる企業には、卸売業、小売業の他に、物流業があります。物流業には運送業、倉庫業、荷役・包装・加工業などがあります。

また、顧客の欲求やニーズを基に、これらの企業を、業種別に分けたり、業態別に分けたりします。下記の表で機能別(業態別)企業というのは顧客要求機能に基づく機能別の事業形態(業態)を言います。なお、業種とは何(商品)を売るかに基づく事業種類を言い、業態とはどのように売るか(売り方)に基づく事業形態を言います。

顧客は商品を求めているだけではなく、買い方の利便性も求めているのですから、それに対応して売り方を工夫する必要があるのです。したがって、企業が生き残るためには商品の企画・開発だけでなく、商品の売り方の工夫、すなわち業種から業態への転換(業態化)や業態開発(売り方の開発)による旧業態から新業態への転換が必要なのです。

商品別(業種別)企業機能別(業態別)企業企業集積


食料品製造業
繊維工業
木材・木製品製造業
家具・装備品製造業
パルプ・紙・紙加工品製造業
金属製品製造業
一般機械器具製造業
精密機械器具製造業
電気機械器具製造業
運送用機械器具製造業など
ファブレス企業(工場を持たないメーカー)
BTO(ビルド・ツー・オーダー:部品見込生産)
EMS(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス:電子機器製造)など
産地型集積
企業城下町型集積
都市型集積
工業団地
バーチャル工業団地






各種商品卸業
繊維・衣服等卸業
飲食料品卸売業
建設材料、鉱物・金属材料等卸業
機械器具卸業
家具・建具・じゅう器等卸業
医薬品・化粧品等卸業など
総合卸(業態卸)
生産財卸
バーチャル(モジュラー)企業
窓口問屋
低温度帯卸
ラック・ジョバー(陳列棚卸)
キャッシュ&キャリー(現金払い持ち帰り制卸)
共同物流(配送)センター
サード・パーティ・ロジスティックス(3PL)など


各種商品小売業
織物・衣服・身の回り品小売業
飲食料品小売業
自動車小売業
二輪車・自転車小売業
家具・じゅう器・家庭用機械器具小売業など
スーパーマーケット(SM)
ジェネラル・マーチャンダイジング・ストアー(GMS:総合スーパーマーケット)
百貨店
専門店
コンビニエンス・ストア(CVS)
ディスカウント・ストア(DS)
ホームセンター(HC)
ドラッグストア
アウトレット・ストア
均一価格店(100円ショップ)
ホールセールクラブ
スペシャリティ・リテイラー・オブ・プライベートレーベル・アパレル(SPA)
オフプライス・ストア
カテゴリーキラー
通信販売・ネット販売
訪問販売
生協など
商店街
ショッピングセンター
ショッピングモール
アウトレットモール
バーチャルモールなど

ファブレス企業は製造業でありながら工場を持たない企業のことで、企画・開発・設計と販売を行う場合と、販売も他社に任せ、企画・開発・設計だけを行う場合とがある。

BTOは部品を見込みで生産、又は購入しておいて、顧客から注文を受けてから組立を行う方式。部品の標準化を図り、顧客からの受注情報を部品メーカーと共有し、短納期(数日)で組立納入する業態。デルコンピュータが有名。関連する用語に、ATO(アセンブル・ツー・オーダー:受注組立)、MTO(メイク・ツー・オーダー:受注生産)がある。

EMSは自社ブランドを持たず、複数の企業から電子機器・部品のOEM(相手先ブランドによる生産)を請け負う業態。設計や物流も請け負う場合がある。委託企業(ファブレス企業)は工場を持つ必要がないので生産にかかわるコストとリスクを負わないで済む。また、受託企業(EMS)にしてみれば、工場の稼動率を高め、規模の利益を享受できる。

産地型集積は燕・三条の洋食器、関の刃物など、江戸時代から続く地場産業が現代に引き継がれ、個々の工程を分業する専門業者が集積する。

企業城下町型集積は日立、門真、豊田など特定の大企業の工場を中心に多数の下請け企業群が集積する。

都市型集積は東京大田区、東大阪市、浜松市、秋葉原、渋谷、札幌など都市を中心に集積する。地理的に近いため、工程間分業や仕事のやりくり、横受けなどがしやすい。また、都市には製造業だけでなく販路開拓、企画提案を行う商社など多様な業種があるため集積しやすい。

バーチャル(モジュラー)企業は必要な経営資源のうち、中核能力(コア・コンピタンス)以外は極力、外部に委託する企業。金型部品商社ミスミの例が有名。ミスミは徹底した「持たざる経営」を実行している。

窓口問屋は小売業者の窓口となって、小売業者から要求されたいろいろな商品をいろいろなメーカーから仕入れる問屋。従来はメーカーが問屋を指定していたため、小売業者は仕入れる商品や仕入先メーカーが限られていた。

低温度帯卸はチルドやフローズン帯専門の卸売業者のこと。チルドやフローズン帯商品の物流はコストも手間もかかり、ノウハウも必要なので専門の卸売業者が必要となった。雪印アクセスが知られている。雪印アクセスは常温も扱うが得意分野は低温度帯である。

ラックジョバー(陳列棚卸)は小売業者にとって主力商品ではない専門的知識を持たない商品を、小売業者に代わって品揃え、陳列、店頭販促などを行う卸売業者。

キャッシュ&キャリーは小口の商品を小売業者に現金で低価格で販売し、小売業者が自ら持ち帰る販売方法を採用する卸売業者。

共同配送(物流)センターは複数の業者が共同出資して維持運営する配送(物流)センター。

サード・パーティ・ロジスティックス(3PL)は顧客(小売業者及び製造業者)から、運送業務を請け負うだけでなく、調達(仕入)、在庫管理、棚卸など全物流業務を包括的に請け負って、顧客の経営戦略上最適な物流システムを設計・構築し、自社及び他社の物流設備を利用して遂行する事業形態。日本シスコ、エディー・バウアー・ジャパン、三井ハイテックなどが知られている。

ホールセールクラブは元々は会員制の現金払い・持ち帰り制の卸売業者であったものが、一般消費者にも販売するようになったもの。会員制であることと低価格・高品質であることが特徴。店舗は倉庫スタイルで商品はダンボールなどに入ったままで陳列もしない。ディスカウントストア(DS)の一形態。コストコが有名。

SPAはアパレルの製造小売業のこと。アパレル商品をメーカーから仕入れて販売するのではなく、自ら商品を企画・開発し、メーカーに製造委託し、商品の流通、販売を一貫して行う業態。ユニクロ、無印良品、洋服の青山などが知られている。

オフプライス・ストアは有名ブランドの衣料品や装飾品などを中心に、定価より安く販売するディスカウント型の小売業態。在庫処分品や輸入品を自ら開拓したルートから安く仕入れることで実現する。アウトレット・ストア(在庫処分品を主に扱う店舗)が特定メーカーの商品を扱うのに対して、オフプライス・ストアはいろいろなメーカーの商品を扱う。

カテゴリー・キラーは特定のカテゴリー(商品分野)に限定し、品揃えに奥行きを持たせ、特定の商品分野なら何でも揃うようにし、大量仕入れ、開発輸入等により低価格を実現する業態。品揃えと低価格により、既存店舗の同じカテゴリー(商品分野)の売上を激減させることから、カテゴリー・キラーと呼ばれる。

ショッピングモールとは生活者が安心して気持ちよく買い物ができるように設けられた歩行者専用の遊歩道のこと。単なる道路ではなく、カラー舗装、装飾灯、ストリートファニチャーなどを配し、安らぎの空間を形成する。なお、アウトレットモールはアウトレット商品を専門に扱うショッピングモールのこと。バーチャルモールは仮想商店街あるいは電子商店街のこと。複数の電子商店(オンラインショップ)が軒を連ねるWEBサイトのこと。

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