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開発&コンサルティング

第1章 商品流通構造

1-1 商品流通の機能(役割)と仕組み

商品流通とは商品を生産者から消費者(生活者)へ流通させることです。その機能(役割)は生産者と消費者(生活者)とが通常は異なるために必要となるのです。もし、生産者=消費者であれば、つまり、自給自足であれば流通させる必要はないわけです。

商品流通の機能(役割)には、商品そのものの流通(物的流通)とこれに伴う商取引(売買)による商的流通(商流)とがあります。さらに、このためには取引情報の流通(情報流)が必要ですので、結局、商品流通の機能(役割)には物流と商流と情報流とがあるわけです。これらの機能(役割)を担う業者を流通業者といいます。

流通業者には卸売業者(問屋)、小売業者の他に、物流業者(運輸業、倉庫業、荷役・包装・加工業など)、金融業者(銀行業、保険業など)、情報業者(通信業、広告業など)があるわけです。なお、生産者には製造業者、農林水産業者、建設業者、鉱業者などがあり、消費者には家庭、企業、公官庁などがあります。

生産者と消費者とが異なっていても生産者から消費者へ直接、商品を届ける(販売する)ことができれば流通業者は必要ありません。しかし、多くの場合、流通業者が必要です。その理由を考えて見ます。

1つ目の理由は、生産者と消費者とが地理的に離れているためです。したがって、商品を輸送する必要がありますから、輸送業者が必要となります。国内であればトラックや貨車で運びますが、海外から輸送する場合には貨物船や飛行機が必要です。

2つ目の理由は、生産の時期と消費の時期とが異なるためです。例えば、米がその典型です。したがって、保存しておかなければならないので倉庫業者が必要となります。

3つ目の理由は生産した物をそのままの状態では輸送や保存ができないためです。例えば、魚介類や肉類です。したがって、荷役・包装・加工業者などが必要となります。

4つ目の理由ですが、生産者と消費者の数が多いためです。したがって、直接、商品を売買すると取引(売買)回数が非常に多くなるのですが、中間に流通業者がいると取引(売買)回数を激減させることができるからです。

例えば、以下の図は5人の生産者と5人の消費者の場合の例です。直接取引の場合、取引(売買)回数が5×5=25回ですが、流通業者を介した場合、5+5=10回となります。

取引回数

仮に、100人の生産者が100人の消費者に商品を直接販売しようとすると、売買(取引)する回数は100×100回で、10,000回となります。ところが、中間に流通業者が一人いて、100人の生産者から商品を購入し、それを100人の消費者に販売するとすれば、取引回数は100+100=200回で済みます。このように、取引する生産者と消費者が多ければ多いほど流通業者を介した方が売買(取引)回数が激減するわけです。

これを取引回数削減の原理とか、取引回数極小の理論などと言います。取引回数が削減できれば取引に必要な費用も削減できるので、生産者は消費者に直接販売するよりも流通業者を介して販売した方が取引費用を安くすることができます。この関係は生産者と小売業者との間でも全く同じことが言えます。つまり、生産者は小売業者に直接販売するよりも卸売業者を介して販売した方が取引費用を安くできるのです。

また、消費者にしてみれば、いろいろな商品を一箇所で購入できるのは便利ですので、いろいろな商品を多くの生産者から購入するよりも小売業者から購入するわけです。このことは、小売業者にしてみても同じことなので、いろいろな商品を多くの生産者から直接購入するよりも卸売業者を通じて購入するわけです。

このためには、小売業者や卸売業者は品揃えが必要ですし、商品知識や経験も必要ですが、これらを専門に行っている業者が行えば効率的な商品流通ができるのです。結局、消費者の利益を考えてみれば、流通業者がいる方が流通費用も安くなるし、便利でもあるわけです。

以上のような理由により、多くの場合には、生産者が消費者に直接販売するよりも流通業者を介して販売した方がよいですし、消費者にしても小売業者を介した方がよいのです。以下に代表的な流通形態を示しておきます。

流通形態

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